適地適作という言葉があるように、作物を育て収量を安定的に最大化するためには、その土地の気象条件や土壌条件に合った作物を選定する必要があります。土壌条件はある程度人の手で変えることができますが気象条件はその場所に依存します。
気象庁のHPで調べることもできますが、人口の少ない地域ではデータが少なく、また観測点のデータがどの程度、自分の畑の気候と合致しているかはわかりません。
今回は、自分の畑の気象条件を観測するため、百葉箱をDIYにて自作しましたので紹介します。
適正作物の選定のため、気象条件を把握することは重要
栽培する作物の選定を行うとき、気象条件を把握することは重要です。例えば冬季の温度の目安として低温要求時間というものがあります。これは休眠状態から目覚めるために必要な、7.2℃以下の積算時間を示したものです。
果樹のブルーベリーを例にすると、系統ごとにこの時間が違っていて、関東以北の寒冷地向きとされるハイブッシュ系は800時間~1200時間時間、比較的暖地で育てられるサザンハイブッシュ系は150~800時間程度、ラピッドアイは300~800時間程度とされています。
人間であれば睡眠時間のようなもので、十分に確保できないと翌年の成長や収穫量に悪影響が出てしまいます。
気象庁の観測データは田舎ほど少ない
気温データは気象庁のホームぺージで検索することができます。
気象庁HP:「過去の気象データ」より全国の観測地点での気温データを閲覧することができます。
しかし、観測地点によって測定されているデータの数にばらつきがあり、例えば長野県の長野市と上高地の2地点でデータを見てみると
長野市は10分単位で気温が記録されています。一方観光地である上高地は…
全くデータがありません。測定間隔を1日単位にしてようやく、降水量だけデータがある状態。いくつかの観測点を確認してみましたが、県庁所在地のような人口の多い場所はデータの種類・量が多く、田舎の人口が少ない場所に行くにつれて、データが少なくなる傾向にあります。
私が相続した土地も田舎で気象庁のデータが使えなかったため、百葉箱を作ることにしました。
百葉箱の特徴
百葉箱は、大気温度の測定を標準化するため広く使われていました。世界で長年使われているものは「スティーブンソン・スクリーン」と呼ばれる、全国の小学校等に設置されていた白い木箱型。内部の通気性をよくするために側面に鎧戸と呼ばれる板羽根が付いています。
Wikipediaのスティーブンソン型の百葉箱の特徴は以下の通り。
1.良質な木材を使用
2.放射熱をなるべく遮断できるよう外側は白色で塗られている
3.通風をよくするため側面は鎧戸、底面・天井はすのこを使用
4.扉側から直射日光が入らないように、扉は北半球では北向きに設置する
5.地上1.25-2.0mの高さに設置
このスティーブンソン型の百葉箱、内部の空気は自然通風にまかせているのですが、熱がある程度こもってしまう構造です。昼間は外気温に対して平均で0.1℃~0.2℃高く、夜間はやや低く計測あれることがわかっています。
特に風の弱い場所ではそれが顕著だったため現在、気象庁では内部にファンも受けて強制的に換気するよう改良したものが使用されています。
とはいえ屋外で温度管理も行わない個人レベルでの使用であれば許容できる誤差なので、スティーブンソン式を使うことにします。
しかし市販品を購入しようとすると、需要が少ないためか数万円~十数万円と高額なものしかなかったので、今回はDIYで自作することにしました。なお自作をされているブログはいくつかあります。私も参考にさせていただきました。エコライフin川口様
使用した材料・道具
材料
・ルーバーラティス(90cm×60cm)
・すのこ板(底面用)
・ベニヤ板(天井・屋根用)
・ツーバイフォー材
・角材(屋根用支柱)
・垂木止めクランプ
・蝶番
・扉留め具
・補強用L字金具
・木工用ねじ
・水性塗料(ホワイト、ブラック)
道具
・電動のこぎり
・L字型直角曲尺
・インパクトドライバー
・塗料バケツ・刷毛
ラティス・すのこ・金具類以外は余った廃材を利用しました。
材料は全てホームセンターで揃います。
なお私はDIY素人ですのでつたない部分があると思いますがご容赦願います。
製作手順
1.ルーバーラティスをカットします。
線を引いて
電動のこぎりを使用して半分にカットします。
カットしたラティスをさらに半分切ります。
45×30の鎧戸が4枚できました。
カットした木材をホワイトの水性塗料で塗装します。
今回は表裏に塗装していますが、熱の遮断を考えるのであれば表側部分だけでよいです。
カットしたラティスを木ねじで留めていきます。
扉用部分に金具をつけます。
内側に補強用のL字金具をつけます。
底面にすのこを取り付けます。
背面部にツーバイフォー材と、単管に固定するための垂木止めクランプを取り付けます。
取付後、塗装します。
天井にベニヤを取り付けます。
天井のベニヤに角材を取り付けます。
角材の上にベニヤの屋根を取り付けます。今回は天井の上に監視カメラを設置したかったので屋根を高くしています。
屋根を黒色で塗装しています。冬季になるべく日光の光を吸収して温度を上げて、屋根に雪が積もりにくくする効果を期待して黒色にしました(効果があるのかはわかりません)
屋根から百葉箱の距離が離れていて、角材の熱伝導率も低いので、黒色でも百葉箱内部の温度への影響は少ないと思われます。
百葉箱の天井部にカメラを設置。IP66防水対応ですが直射日光や激しい雨から守るため、屋根の下にしました。カメラは畑の積雪や水たまり状況の監視するために設置しています。
荷重が集中しそうな、強度に不安がある場所は金具を追加して補強。
製作した百葉箱をクランプを締めこんで単管パイプに固定します。
完成。百葉箱は底面が地表から150cmの位置になるように設置しました。
カメラの電源は百葉箱の下に設置済みの電源BOXから供給します。
内部に温度を記録するデータロガーを吊るしました。ロガーを入れても内部のスペースに余裕があるため、今後は通信機器等を格納していこうと考えています。
DIYなら材料費は1万円以内で作ることができるので、温度や湿度の記録を考えている方は、試してみてください。
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